こんにちは。
最近、原付のレストア作業をしました。
レストアって修正しないといけない事も多いんですが、旧車だとパーツが手に入らないため修復が難しい事もあるかと思います。
つい最近、ハーレーにお乗りのお客様で、パーツが国内で手に入らないので海外に発注したが、納期が2年(ビックリして聞き返しましたが本当に2年らしいです)だと仰られてました。待ってられないので自分で溶接して作ると、弊社で溶接機をご注文頂きました。
溶接できるとなると廃盤で売ってないパーツでも、既存のパーツの修正で使えるようになるかもしれません。それではご覧ください。
こちらは同僚が会社に持ってきた原付。
引っ越しついでに置き場所の関係で会社に持ってきたとのことですが、しばらく放置されていたこともあってか、至る所がボロボロです。
しかしエンジンは一応かかり、このまま捨てるのも勿体ないし、近場を回ったりするのに便利だから乗れるなら乗りたいとのことでした。
とりあえず目についたのがミラーのボルトの破断。
こういう折れ込んだボルトの摘出ってかなり面倒です。場所によっては摘出するための工具が入らかったりと、極力折れる前に対処したいところ。
今回は作業しやすいところなのでサクっと摘出していきましょう。(なハズでしたが。。)
とりあえずネジザウルスで残った先端を挟んで回そうとしたもののビクともせず。
やりすぎて外せず先端が削れて引っ込んでしまったら面倒なので、そうなる前に端材の丸棒を溶接しまして
グイっと…回らず(汗)じわっと力を入れると嫌な感触がして折れました。
経験上、普通は溶接した熱で固着もある程度緩和されて割と簡単に回るはずなんですが。
ちなみに逆ネジでしたっていう落ちはありません(笑)
溶接で回らないとなると他の方法じゃダメだろうなぁ。。とは言いつつもミラー無しで乗るのは危ないので何とかしないといけません。
ダメ元でエキストラクターもやってみたけど見事に折れました。そうなると思った。
エキストラクターってほとんど役に立ったことないわ。。ぐぬぬ。。
ここまでくると普通ならリコイル…となるのでしょうが、中心には折れたHSSであろうエキストラクターの残骸が刺さっています。
で、その周りのメスネジ部分はアルミです。
こういう状況に陥ってしまった時って、リコイルの下穴を空けようにも硬いエキストラクターの残骸に刃が噛まずに逃げて、周りのアルミが斜めに削れていく事があります。
本来であれば、こうなっちゃう前にリコイルするつもりで作業しないとダメなのでしょうが、ボルトの折れ方が斜めになってたりすると、そもそもリコイルの下穴すら真っすぐに空けられないパターンも多いと思います。
そもそもリコイル持ってませんので、最初からその選択肢は無しです。
全然サクっといかなかった…(;’∀’)
こうなってくるともう作り直したが早そうだったので、下穴部分を切断して折れたボルトを摘出し、新たにアルミを溶接してネジ穴を作ることにしました。
切り落とした箇所に同じ形状のアルミの破片を溶接しました。
機種はWT-TIG200で鋳物アルミ溶接です。溶接棒はφ2.0/4043を使用。
溶接した板の厚みとしては8mmで結構厚いんですが、物が小さいのですぐに熱が溜まってアツアツになります。
そうすると一気に溶け落ちるので、100A程度から様子を見つつ時間をちょっと空けながらも、本溶接自体はスピーディーにしています。
今からメスネジ穴を空けるので、ビードは削って平らにしました。
ボール盤で穴をあけて
タップを切り直します。アルミは柔らかいので、こういった作業がしやすいです。
ただし、何度も付け外しする所だとネジ山の耐久性もあまりないので、素材は用途に応じて選定してください。
完成です。鋳物ですが普通に溶接できました。
車やバイク関係のケース類はアルミの鋳造品が多いんですが、今の所溶接できなかった物は無いです。
ちなみに、100均に売っていた小さいアルミケースの鋳物は、アークを当てるとブクブクと湧いてきて中身が詰まってない感じで溶接できませんでした。
グラインダーかけるときに溶接してないとこまで削ってしまった。。
続いてボルトが根元から折れたミラー。
普通に新しいミラーを買えばいい話なんですが、溶接できるんで手持ちの全ネジをくっつけます。言っても原付なんで、見た目はそこまで気にしてません。
まずは手持ちのナットとボルトを溶接します。
それをミラーの折れた部分に溶接して、無理やりボルトをくっつけました。
ボルトを直接溶接でも良かったんですが、強度の関係でよりしっかり溶接できそうなナット外周で溶接しました。
先ほど溶接してタップを切り直したとこにネジ込みます。
ミラーの角度合わせ固定用のナットも入れるとナットが重なっててちょっと変な感じになっちゃいましたが、まぁ見る人いないでしょう。これで公道を走れるようになりました。
そこでちょっと敷地内で試乗してみたら、危険なレベルでブレーキが効かない(汗)
レバーをグリップとくっつくまで握っても、ロックする気配が全くありません。
調整ナットを回して遊びを詰めておきました。それでも効きが弱い気もしました。
続いてエアフィルター。
エンジンの始動性が悪かったので一応見てみたら、吹き返しでベトベトでした。
新品に交換しました。
樹脂系のパーツの色褪せも、ある程度は黒さを取り戻すことができます。
やり方は簡単で、市販のガスバーナーで軽く炙る事で、表面が僅かに溶けて白いクスミが黒くなります。
左半分が炙る前で、影がかったように見える右半分が炙った後です。薄いキズは目立たなくなります。
フロントカウルには遊び心で余ってたカーボンラッピングシートを追加…(笑)
シールだから簡単に外せます。
タイヤの溝も無かったので交換します。
リヤはマフラー外さないとホイール外せないので外しました。
そしてホイールを外そうとするも、センターのロックナットが固着してて固い。リヤブレーキを握ってもらってもブレーキが負けて空回りしてしまいます。
金物のツメが付いたロックナット相手にインパクトはできるだけ使いたくないしなぁ。。。もしこのセンターのナットが舐めてしまうと、モロに駆動系なので大惨事です。
何とかホイールが外れました。
ブレーキの効きの悪さから予想はしてたけど、シューの摩材がなくなってバックプレートまで到達直前でした。これも交換します。
まぁ原付なんて乗りっぱなしなんで、こんなもんですね。
ビードブレーカーが無いので、原付だし踏んでみてビード落ちないかなーと思いましたが、さすがに落ちません。
バイスで挟んだら簡単に落ちました。簡易プレス的な使い方もできて便利です。
タイヤレバーを駆使して外しました。センターは山が完全に無い状態です。
過去に普通のバイクのタイヤ交換や車のタイヤ交換は何度もやってきましたが、原付と言えどタイヤの脱着はホイールを固定できないと力が入れずらいですね。
新品タイヤを組んで、エア入れてビード張って完了です。
これでしばらくは安心して乗れるはず。リヤも同様に交換しました。
ただ、ホイール外してたらフロントフォーク死んでるのが発覚したけれども…まぁそれはおいおいということで(笑)
続いて破れたシートの補修をします。
とりあえずシートを外そうと、この六角ボルトをインパクトで回したところ「カランカラン…」ナットが中に落ちていきました(汗)
ナットを摘出しようとしたら外装を外さないと取れそうにないし、とりあえずこれは後回しにします。
破れた表皮を外します。
打ち込まれている針をマイナスドライバーでこじって抜き取っていきます。
一部凹んでいたのでガムテープに型取りします。
何事があったのかは分かりかねますが、形状が卑猥な気が…(笑)
このガムテープを被せて、下のスポンジを切り取っていきます。
本当はシートと同じ材質なクッションがあればよかったのですが、無かったので適当なスポンジになりました。
切り取ったスポンジを貼り付けるいい方法がなかったので、木工用ボンドで貼ってみます。どうせ上に表皮がくるので、接着はある程度でもOKななずです。
一応ズレないよう、ガムテープで貼り付けた状態でシート表皮を打ち込んでいきます。
シート張替えにはタッカー(ホッチキスの強力版)を使います。
手順として、最初に長手側(前後)を張った状態で固定しまして
横も引っ張りながらタッカーで打ち込んでいきます。
破れの無いシートになりました。
シートも車種専用に型取りされた物が安く売っていますし、表皮とタッカー本体合わせて4,000円ぐらいです。
作業的にもそんなに難しくないので、シート張替えお勧めです。
そしてシート取り外しの時にやってしまったボルト。
ナットが下に転がっていったので、摘出が厳しい状況です。先端が磁石の棒も入らず。
外装外すのも手間ですしどうしようかなと思いましたが、ナッターを打ち込むことにしました。
手間が省けてラッキーなことに、下穴は初めから丁度いい感じ(カシメ下穴径8.8mmと書いてありました)でした。
バッチリ固定できました。
ナットが落ちたままになってるけど、その内排出されるでしょう。
安易に外装を外そうとすると、固定クリップが折れたり、年数が経って硬化気味の外装が割れたりするので、下手に手を出さない方がいい場合もあります。ごめんよ(;’∀’)
注文していたブレーキシューが届いたので交換します。
昔はバイク屋さんでパーツリスト見ながら発注かけてもらってましたが、今は品番検索から注文まで全てインターネットで完結するので便利ですね。
シュー交換前のブレーキの遊び調整はこんな感じで、相当引っ張ってる状態でしたが
シュー交換後はこれぐらいまで戻っていきました。
これでしばらくは安心して乗れるはずです。