2021年04月20日
こんにちは、関東営業所の磯部です。
同じ埼玉県内の工場で設備の製造を行われている企業様にWT-TIG315溶接機をご購入いただき、
操作説明と兼ねてアルミ溶接のコツを説明しに行きました。
こちらの工場では、今まで様々な鉄の溶接作業をされており、アルミ溶接は外注していましたが、
これからアルミ溶接も内製化し事業を拡充するそうです。
工場に訪問すると、既に納品した溶接機が設置してありました。
(偶然にも図ったようにピッタリと収まってますね)
WT-TIG315溶接機は交直両用機なので、勿論、鉄やステンレス(直流)の溶接もできますが、
棚の下には、高価そうなフルデジタルの直流専用機(鉄の溶接用)が既に有りますので…(苦笑)
アルミ(交流)溶接専用で使用されるそうです。
早速、説明を行うのですが、作業者の方はベテランさんで鉄の溶接経験は豊富でアルミ溶接の
経験が無いだけなので、鉄とアルミ溶接の違いと注意点を説明しました。
アルミも鉄も溶接の施工方法は変わらないのですが、アルミ溶接が難しいと思われているのは、
鉄と性質・特性が違うからです。
溶接に関係するアルミと鉄の異なる性質・特性の主だった点を挙げます。
●溶接スタート時は、周りに熱が逃げてしまい溶け始めるまで時間が掛かるので、
しっかりと溶融プールができるまで待つ。(焦らずにじっと我慢する)
●一度熱が入りると、逆に溶けるのが早くなるので溶接スピードを上げていく。
●母材への熱の入り方次第で溶け込みの変化が大きいため、適した溶接電流の調整が必要。
・母材が冷えている ⇒ 溶け込みが悪い ⇒ 溶接電流を上げる。
・母材が熱い ⇒ 溶け落ちやすい ⇒ 溶接電流を下げる。
●溶接棒は太目を選定する。(鉄、ステンレスは細目)
・鉄やステンレスと比べて溶融プールが大きくなり、溶接棒を加える量が多いため。
・アークの熱により溶接棒の先端が溶け玉に成りやすいため。
●アルミ:2020℃ / 鉄:1360℃。
・母材よりも表面の酸化皮膜(自然酸化)の融点が高く、母材を溶かす邪魔をするために
交流〔電極+〕で除去〔クリーニング作用〕しながら交流〔電極-〕で溶かすを繰り返して
溶接を行う。(溶接電流の交流を使用する理由)
・酸化皮膜が厚くなった(腐食し白っぽくなる)アルミ材の場合には、溶接の妨げになる
ために予めしっかりと削り落とす。
●市販されているアルミ製品には耐食性の向上のために*アルマイト処理されものが有ります。
(*アルミを電解処理して人工的に厚い酸化皮膜を生成させる表面処理のこと)
・見分け難いので注意!
・アルマイト処理されたアルミ材は、絶縁され通電できない為、予めしっかりと削り落とす。
(削りが甘いと溶融プールが沸いたり、黒い物が出てきたり溶接不良になります。)
いつも前置きが長くなり、すみません…..(このアルミの特性を知って貰えば特に難しくないので)
より詳しく知りたい方は、【初心者向けアルミ溶接特設ページ】をご覧ください。
それでは、先ず溶接してみないと判らないので、試して貰いました。
前述した内容を簡単に説明しながら溶接を試していただきますと、最初は少し戸惑っていましたが
さすがにベテランさんで直ぐにアルミの溶け方に慣れて上手く溶接できるように成りました。
薄板から厚板の突け合わせや隅肉溶接を試しました。
また、パルス溶接をした事が無かったとの事で、角継の溶接ではナメ付け(共付け)で、
パルス制御を使い周波数を変えてみて溶け込み方の違いや溶接ビードの波形を比べて
楽しんでました。
こちらは、板厚9mmですが、しっかり溶けて溶接ができ、これならアルミ溶接の依頼が来ても
もう大丈夫!と、喜んで満足しておられました。
このようにアルミ溶接を行ったことがない、溶接してみたい、知りたい、
という方は是非、ご気軽に弊社までお越し下さい。
また、近郊であればデモにお伺いいたします。
その他、何かご不明な点などございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。
今回使った溶接機はこちら:WT-TIG315溶接機
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